| 19XX年.南太平洋で行なわれた核実験によって,ジュラ紀の肉食恐竜が甦る.ゴジラと名付けられたその怪物は,大戸島を襲った後に東京へと歩を進めていく.帝都が放射能をまき散らすゴジラの驚異に晒される中,防衛軍に朗報がもたらされる…. |
東宝プロデューサーの田中友幸が,インドネシアでの映画合作交渉が頓挫した帰路の機中,レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)が特撮を担当した「原子怪獣現わる」(1953)の新聞記事に触れ,日本独自の怪獣映画を構想した.名称"ゴジラ"は,東宝社内でひときわ巨漢の社員に付けられたあだ名に由来するとも伝えられるが,語源としてはゴリラとクジラを合成したものとされる.
本多猪四郎は広島に赴いた帰還兵であり,焦土と化した市街の光景を直接目撃していた.本多がメガホンを執ることで,ゴジラの破壊は原爆投下と地続きの恐怖として銀幕に焼き付けられることになった.特撮監督・円谷英二の手法――精緻に再現された縮小ミニチュアセットを,スーツアクターが演じる着ぐるみの怪獣が蹂躙するスーツメーション技法――は,予算的制約から生まれた折衷案でもあったが,結果として怪獣に独特の生々しい量感を与えることに成功した.
コントラバスの弦に松脂を塗った革手袋を擦り付けることで生み出された,地鳴りのような咆哮は,伊福部昭の荘厳な行進曲的主題旋律とともに怪獣映画の音響美学を根本から刷新した.本作には,二人の科学者の対位法がある.山根恭平博士がゴジラを絶滅危惧の生証人として研究・保護を主張するのに対し,芹沢大助博士は究極兵器「オキシジェン・デストロイヤー」を手にしながら,その公開を拒み続ける.
自身の発見が核兵器と同様に軍事転用される必然性を憎む芹沢は,研究ノートを焼き,ゴジラとともに海底に沈むことを選ぶ.この自己犠牲は,マンハッタン計画に参加した物理学者たちが原爆投下後に苦しんだ良心の呵責と文脈を共有している.着想から完成までわずか半年余りの製作期間が生み出したものは,娯楽映画の枠をはるかに超えた,日本的な戦後体験の結晶.南太平洋のビキニ環礁でアメリカが実施した水爆実験の放射性降下物を浴びた第五福竜丸の乗組員・久保山愛吉が,1954年9月23日に死亡した.本作の公開はその6週間後のことである.
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原題: GODZILLA - THE KING OF MONSTERS
監督: 本多猪四郎
97分/日本/1954年
© 1954 TOHO CO.,LTD.
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