■「タイタンの戦い」デズモンド・デイヴィス

タイタンの戦い 特別版 [DVD]

 ギリシャ神話を舞台に,ゼウスの息子ペルセウスの愛と冒険を描く特撮ファンタジー.王女アンドロメダを海の怪物クラーケンから救い出すため,ペルセウスは天馬ペガサスに乗り,メデューサの首を求めて過酷な旅に出る….

 イ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)の名を抜きに本作を語ることはできない.独自のストップモーション技術(ダイナメーション)の集大成として,この作品は位置づけられる.ハリーハウゼンの手による最後の劇場公開作であると同時に,CGI以前のファンタジー映画時代の終焉を告げる墓碑銘である.メドゥーサの洞窟,翼馬ペガサス,二頭犬ディオスキロス――コンピューターが生成する滑らかな映像にはない独特の生命感を持つ.

 ハリーハウゼンのストップモーションは傑出しており,確かに視覚的な魔法を紡ぐ.しかしブルースクリーン合成など他のエフェクトは失敗しており,とりわけポセイドンがクラーケンを解き放つ場面は粗さが目立つ.オリュンポスの神々はドラマの推進力であるはずが,バージェス・メレディス(Burgess Meredith)演じるアモン以外,キャストは驚くほど存在感が薄く,神々の場面は概ね退屈だ.本作最大の舞台裏ドラマは,メドゥーサの斬首シーンを巡る主演俳優と製作陣の対立だった.

 当初の脚本では英国の検閲基準に配慮し,ペルセウスは盾を投げてメドゥーサの首を飛ばす演出が予定されていた.しかし,ハリー・ハムリン(Harry Hamlin)は,ギリシャ神話の原典との相違を理由に最初から反発し,撮影当日になっても変更されていなかったため,撮影拒否を宣言してトレーラーに籠城した.プロデューサーのチャールズ・シュニアー(Charles H. Schneer),ハリーハウゼン,デズモンド・デイヴィス(Desmond Davis)監督を憤慨させながらも,ハムリンは徐々に他のスタッフを味方につけ,最終的にシーンは書き直されたという.

 1981年時点のファンタジー冒険映画として見れば確かに高揚感を与えるが,同時に50-60年代の「シンバッド七回目の航海」(1958),「アルゴ探検隊の大冒険」(1963)への郷愁から生まれた作品でもある.つまり1981年の観客にとってすら,懐かしさへのノスタルジーという意味を持っていた.物語前半の冗漫さ,神々シーンの空虚さ,合成技術の粗さ――これらは否定しがたい欠陥だが,ハリーハウゼンが最後に彫り込んだ生き物たちの「手触り」は,デジタル全盛時代の現在も独自の存在感を放つ.神話映画の時代の墓標として,これ以上ふさわしい作品はほとんど存在しない.

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原題: CLASH OF THE TITANS

監督: デズモンド・デイヴィス

118分/アメリカ/1981年

© 1981 Warner Bros. Entertainment Inc.