| デトロイト郊外の閑静な住宅街.平穏に暮らしてきたウルフマイヤー家の四姉妹を突然の大問題が襲う.父親が突然家を出て行ってしまったのだ.どうやらスウェーデン人の秘書と駆け落ちしてしまったらしい.以来,優しかった母テリーが急に怒りっぽくなり,四姉妹を悩ませることに.一方,独り身となったテリーには,元メジャーリーガーの隣人デニーが急接近してくる…. |
心理学者カール・G・ユング(Carl Gustav Jung)は,人生の変遷を太陽の運行になぞらえたライフサイクル理論を唱えた.誕生とともに夜の大海から昇った太陽は,青年期を経て中年期にその頂点へと達する.活動範囲が最大化し,遠方を最も強く照らし出すその瞬間,太陽は残酷にも下降を開始する.「正午」を過ぎたのだ.それまでの価値観や理想が劇的に反転(転倒)し始める,避けることのできない転換期の訪れを告げている.
「人生の正午」に伴う当惑や痛みに対し,的確に対応できる者は稀だ.誰にとっても一度きりの人生において,潮時を見極め,新たな自己へと脱皮するのは容易ではない.本作は,人生の転換点に取り残され,戸惑いと怒り,そして底知れぬ悲しみに暮れるひとりの母親と4人の娘たち,かつての栄光を失った男が織りなす,3年にわたる魂の軌跡を描いた物語である.夫の突然の失踪――裏切られた怒りに狂う母親テリーは,酒に逃避し,棘のある言葉を全方位に撒き散らす.無軌道な振る舞いに翻弄されるのは,多感な時期にある4人の娘たちだ.
親子は互いを激しく非難し,傷つけ合いながらも,皮肉なことにその依存関係から抜け出せずにいる.そんな一家を静かに,時に無防備に見守るのが,元メジャーリーガーのデニーである.演じるケビン・コスナー(Kevin Michael Costner)は,かつてのスター然としたオーラを脱ぎ捨て,全盛期を過ぎた中年男の悲哀を,自然体で表現している.ヒット作から遠ざかっていた当時のコスナー自身の境遇が,デニーという役柄にメタフィクショナルな深みを与え,枯れた存在感が本作のアンカー(重し)となっている.
ユーモアと悲劇が同時に降りかかる現実の中で,家族それぞれが抱える問題が臨界点に達したとき,人はようやく自身の「上辺の感情」を解きほぐす余裕を得る.再生のプロセスを描くために,一家は3年という歳月を必要としたのだ.静かな住宅街に流れる四季の彩りは,『若草物語』を彷彿とさせる四姉妹の成長を美しく引き立てる.末娘のモノローグ「怒りは人を変えてしまうが,それを乗り越えた時,人はさらに変われる」――人生の正午を過ぎ,夕刻へと向かう太陽が,再び穏やかな光を取り戻すための希望である.
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原題: THE UPSIDE OF ANGER
監督: マイク・バインダー
118分/アメリカ=ドイツ=イギリス/2005年
© 2005 Film & Entertainment VIP Medienfonds 2+3 GmbH & Co. KG and MDP Filmproduktion GmbH
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