■「ポーリーヌ」リーフェン・デブローワー

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 読み書きもできないし靴ひもも結べないけれど,いつも元気なポーリーヌ.ある日,世話をしてくれていた姉のマルタが亡くなり,大好きな妹のポーレットと一緒に暮らし始めるが――一生懸命に生きるポーリーヌのピュアな笑顔は,周りの人々の心をやさしく溶かしていく….

 的障害をもつポーリーヌと,彼女をめぐる三姉妹の関係性は,人間の利害と愛情が交錯する縮図.本作の舞台となるベルギーは,19世紀にノーベル文学賞作家モーリス・メーテルリンク(Maurice Maeterlinck)を生み出した国であり,同時に花の国としても知られる.ブリュッセルのグラン・プラスは毎年「フラワーカーペット」で彩られ,ヴィクトル・ユゴー(Victor-Marie Hugo)が「世界で最も美しい広場」と称賛した.花々とチョコレートを媒介にして,ポーリーヌの純粋さが描かれる.

 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Пётр Ильич Чайковский)《花のワルツ》に乗せて,庭園で無心に水を撒くポーリーヌの姿は,生命を喜びで満たす存在として際立っている.ベルギーのもう一つの象徴であるチョコレートも重要な役割を果たす.ポーリーヌの愛するものは,チョコレートたっぷりのタルティン,綺麗な花の水やり,妹ポーレットの洋服屋にあるバラの包装紙.ポーリーヌに振り回されているポーレットも,ポーリーヌの天真爛漫さに救われていた自分に気づく.

 ポーリーヌが無意識に体現していたのは,資産分配を超えた〈生きる意味の共有〉であった.その気づきが,遺言や財産よりも強い絆を残す.本作は,ベルギー文化の色彩感覚と音楽的比喩を駆使しながら,介護と相続という冷徹な制度的現実に,人間の優しさと無垢を重ね合わせた寓話である.観客が最後に胸に残すのは,花や包装紙の鮮やかさと同時に,人が他者と共に生きることでしか見出せない〈色彩〉なのである.

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原題: PAULINE & PAULETTE

監督: リーフェン・デブローワー

78分/ベルギー=フランス/2001年

© 2001 Canal+