■「ロッキー2」シルヴェスター・スタローン

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 ヘビー級タイトルマッチで辛くも王座を守ったとはいえ,その戦いぶりに非難が集中したアポロに対し,敗れたりとはいえフルラウンドに感動のファイトを展開したロッキーには熱烈な賛辞が集中.巷に流布するアポロ再起不能の噂を打ち消そうと,アポロ陣営は再度ロッキーとの再戦を宣言するが….

 作「ロッキー」(1976)の神話的成功――無名俳優が脚本・主演をこなし,アカデミー作品賞を獲得するという奇跡――その主題は,勝敗を超えた人間の尊厳,そして「立ち続けること」の意味を問うものであり,シルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)という表現者の自己投影でもあった.続編は,ロッキーとヘビー級世界王者アポロの壮絶な試合直後から始まる.ロッキーは試合で視力を損ない,引退を宣言.エイドリアンとの結婚や妊娠を経て「普通の生活」に戻ろうとするが,職探しにも失敗し,CM撮影でも台詞が言えずに追い出される.やがて経済的困窮とアイデンティティの喪失に直面し,再びリングに戻る決意を固める.再起の決断が物語の核心であり,個としての自己肯定を勝ち取る行為として描かれている.

 スタローンは,実生活においても当時キャリアの瀬戸際に立たされていた.前作成功後も,演技力もない"一発屋"と揶揄され,脚本家・監督としての力量も軽視されていた.本作の製作では,前作の監督ジョン・G・アヴィルドセン(John G. Avildsen)が降板したことを受け,自らが監督を務めることとなる.これにより作品はより私小説的になり,"ロッキー=スタローン"という構図が一層明確化された.一方,敵役アポロは前作では絶対王者として描かれたが,本作では勝利後の世論の風当たりに苦しむ脆さを露呈する.彼もまた,誇りと世間の期待の狭間で揺れる男である.黒人アスリートとして社会的成功を掴んだ者の内面を描くという意味でも,前作よりも社会的なニュアンスを帯びている.脚本上の印象的な変更点として,ロッキーの愛妻エイドリアンの昏睡が挙げられる.

 この展開は,タリア・シャイア(Talia Shire)が別作品の撮影スケジュールで数日参加できなかったことに起因し,急遽脚本が書き換えられたためであった.結果的に,昏睡状態からの覚醒がロッキーの覚醒を呼び起こし,有名な"Win(勝って)"という台詞が,物語の転換点かつ感情の爆発点となった.偶然の脚本改変が,作品全体の構造的な飛躍に寄与したのである.音楽面では,ビル・コンティ(Bill Conti)の名曲《Gonna Fly Now》に加え,より情感的なテーマ《Redemption》が使われている.前作の勝利なき試合を経て,ようやく掴む「意味のある勝利」への祈りとも取れる旋律であり,映画の精神的重心を形成している.スタローンは本作で,フィラデルフィアの都市景観と音楽と肉体の動きを融合させ,映画音楽と身体表現の一体化というスタイルを選んだ.

 トレーニング・モンタージュ――子供たちが次々とロッキーに続いて階段を駆け上がる――は,撮影当日,現場周辺に集まった子供たちの即興的な参加によって生まれたものである.スタローンは,ロッキーが地域社会のアイコンであることを示したかったと語っており,このシーンはその理念を可視化する象徴となった.フィラデルフィア美術館前の階段は以降「ロッキー・ステップ」として知られ,現在も多くのファンが模倣する巡礼地となっている.クライマックスのリマッチ.前戦の敗者であるロッキーが,死力を尽くして最後の最後に立ち上がる姿――勝敗ではなく,立ち上がる意志こそが人間を人間たらしめる――普遍的なテーマは以降のシリーズを貫く哲学ともなった.

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原題: ROCKY II

監督: シルヴェスター・スタローン

119分/アメリカ/1979年

© 1979 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.