■「ラブ・アクチュアリー」リチャード・カーティス

ラブ・アクチュアリー [Blu-ray]

 クリスマスが近づく12月のロンドン.再起をはかる落ちぶれたロック歌手,妻を亡くした悲しみを女友達に訴える男,映画の撮影現場でスタントインとして働く男女,秘書に恋する独身の若き英国首相,結婚式を挙げる若いカップルとその友人,ガールフレンドが弟と浮気している現場を見てしまいフランスに旅立つ男,同僚への密かな思いを社長に見抜かれアドバイスを受ける女――ささやかな夢と悩みを持って生きる19人の男女の愛がクリスマス・イブに向かって動き始める….

 数の登場人物とエピソードが,クリスマスを軸に交差する本作は,英語圏では定番のホリデームービーとして不動の地位を築いている.もっとも,評価は一枚岩ではなく,愛の形を祝福する一方で,その安直さや感傷過剰さに対する批判も少なくない.物語はロンドン・ヒースロー空港の人々の抱擁シーンから始まる.愛は実際,至るところにある(Love actually is all around)というモノローグが,本作の全体主題を予告している.

 60年代の楽曲《Love Is All Around》を皮肉まじりにカバーする老ロッカー・ストーリーと対を成しており,愛が商業主義や老いの皮肉と共存することを描き出す.脚本家出身のリチャード・カーティス(Richard Curtis)は,群像劇に熟達しており,恋人,夫婦,不倫,片想い,家族,友情と,愛のスペクトラムを俯瞰する構成は,手紙の束を読み解くような感覚をもたらす.

 倫理的に問題のある描写もある.ヒュー・グラント(Hugh Grant)演じる首相が秘書のナタリーに恋をする展開は,権力と恋愛の非対称性が見過ごされている.また,アラン・リックマン(Alan Rickman)演じる上司と秘書の関係性も,不倫未遂として描かれるが,その余韻は妻役エマ・トンプソン(Emma Thompson)によって辛うじて重みを保っている."Love Actually"という言い回しは,イギリス英語特有の副詞的強調表現であり,アメリカ的な真実の愛の断定とは異なり,曖昧さと含羞を伴うイギリス的感性を思わせる.

 ロマンス映画としてではなく,愛という語の定義への多声的考察が可能である.全ての愛が報われるわけではないし,正しいわけでもない.しかし,世界の片隅で誰かが誰かを想っている事実,それ自体がクリスマスという祝祭を可能にしている.脚本段階では20本近いエピソードが存在し,最終的に10本に絞られたという.クリスマス空港のシーンに登場する一般人は実際の到着ロビーで隠しカメラを用いて撮影されたもので,ドキュメンタリータッチのためとはいえ,モラル的には最悪の映画である.

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原題: LOVE ACTUALLY

監督: リチャード・カーティス

135分/イギリス=アメリカ/2003年

© 2003 Universal Studios