■「ペトラは静かに対峙する」ハイメ・ロサレス

ペトラは静かに対峙する [DVD]

 作品制作のために著名な彫刻家ジャウメの邸宅にやってきた画家ペトラ.彼女の本当の目的はジャウメが自分の父かどうか確かめることだったが,接するうちに彼が権力を振りかざす冷酷な人物であることがわかってくる.そんな中,一家の家政婦が謎の自殺を遂げる.そこから始まる長い負のスパイラルにペトラも巻き込まれていく….

 可解なメロドラマは,家族における典型的なテーマ――秘密,嘘,機能不全関係――を取り入れている.出自の答えを求めるヒロインの思いを軸に展開するが,さまざまな力がその道筋を複雑にしている.彫刻家ジャウメは冷酷でマキャベリ的な人物として描かれ,その影響力は芸術活動を超え,人々の精神にまで及ぶ.演じるジョアン・ボテイ(Joan Botey)は,77歳にして強烈な悪役として印象的である.毒舌や冷酷な行動には癒やしがたき毒が込められており,その存在感が物語全体を支配している.プロットの時系列を大胆に崩した構成の本作は第2章から始まり,第3章を経て,第1章に戻る.章立てのシャッフルは観客の期待を裏切り,混乱させるが,物語の謎を深める.

 章タイトル自体が重要な出来事をほのめかす手法も効果的であり,ある登場人物の死が予告される形で提示される.ハイメ・ロサレス(Jaime Rosales)は,この映画を新たな創作段階の始まりと位置付けているが,安易な答えを提示することは避けている.物語だけでなく,映画技法そのものも観客との距離を保つ.撮影監督エレーヌ・ルヴァール(Helene Louvart)のカメラは,登場人物をフレームの外に置き去りにしながら,無人の空間や風景に焦点を当てる.視覚的手法は,物語の複雑さを強調し,観客に隠れた意味を探すよう促している.撮影はカタルーニャ州ジローナ近郊で行われた.撮影地となった邸宅は,歴史的な価値が高い建築物であり,独特のデザインが映画の雰囲気をさらに引き立てている.

 劇中で使用された美術品や彫刻の一部は,地元のアーティストたちによるものが多く,映画のリアリティを深めるための細部へのこだわりが感じられる.形式の複雑さは,クリスチャン・エイドネス・アンデルセン(Kristian Eidnes Andersen)の非言語的な合唱音楽,ルシア・カサル(Lucia Casal)の巧みな編集要素によって補完され,互いにリズム的な矛盾を生みながら,映画全体の一貫性を保っている.物語の核心は,ペトラのアイデンティティを巡る探求であるが,結末は観客の知性に訴えるものであり,感情的な満足を覚えるものではない.ペトラが未知の父親を探す遍歴は,ギリシャ悲劇を思わせる運命の重さを伴いながら展開する.ジャウメの冷酷さが物語を駆動し,傲岸不遜な男を取り巻く人々の破滅を引き起こす.

 本作は人間の残酷さや無力さを描きつつも,再生力や生命力をも映し出している.この両義性が,本作を悲劇以上のものにしている.スペイン語の原題"PETRA"は,「岩」を意味するラテン語由来であり,ペトラの内面的な意志,あるいは彼女の運命に立ちはだかる試練を暗示している.スペインの乾いた大地を舞台に,家族の秘密がパズルのように徐々に明らかになるこの物語は,形式的な実験性と内的葛藤の心理描写を兼ね備えている.本作は,カメラ1台と1つのレンズで,すべてステディカムで撮影された.デジタル・インターミディエイト――フィルム撮影された映像のデジタル化,編集やカラーグレーディング,CG・VFX合成などの中間処理――を経由せずに,光化学的に色調整されている.

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原題: PETRA

監督: ハイメ・ロサレス

107分/スペイン=フランス=デンマーク/2018年

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