| 作家志望の男ビルは,創作のヒントを得るため,通りすがりの人々のあとをつける行為を繰り返していた.ある日,ビルがいつものように男をつけていると,尾行していることがその男,コッブにバレてしまう.だが,コッブもまた,他人のアパートに不法に侵入し,私生活を覗き見る行為に取りつかれていた.ビルは次第にコッブに感化されていく…. |
鬼才クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)は,リワインド・フィルムの傑作「メメント」(2000)以前のインディーズ長編デビュー作で,無比な倒置法のプレゼンスを見せていた.超低予算の頸木を逆手に取るような,モダンな香りとノワールの傑作性を持つ本作は,ストーリーテリングの技巧で耳目を引く.物語は,イギリスの知的階層の隙のなさと,容赦のなさを鋭く描き出している.
“フォロウィング”というタイトルには,「引き続いて起きる」「随行者」「崇拝者」という複数の意味が篭められており,物語の核心に迫るキーワードである.謎めいた男コッブは,イギリス国民のわずか3%しか持ち合わせていないクイーンズ・イングリッシュと呼ばれる容認発音(received pronunciation)を操り,特権的な言語スキルを誇る.コッブの知性に魅せられ,小説の着想を得ようとしたビルは,破滅的な代償を支払うことになる.
ビルは,社会的にも知的にもエスタブリッシュメントに太刀打ちできないことを痛感し,コックニー・イングリッシュの使い手としての限界を思い知らされる.この「社会勉強」とも言える厳しい現実は,単なる無知では片付けられないほど痛烈な仕打ちである.ノーランは製作当時,平日はビデオ制作会社の社員として勤務し,毎週土曜日に本作の撮影を進めるという過酷なスケジュールをこなしていた.
監督・脚本・製作・撮影・編集の全てを一手に引き受け,長回しのテイクを編集で繋ぎ合わせることで,全体を完成させた.製作には20週以上を費やし,評判は口コミで広まり,イギリスと北米を中心に劇場公開を果たした.低予算映画でありながらも,その技巧とインテリジェンスの深さで観客を魅了し,ノーランの才能を世に示す画期的な作品である.ノーランの後の作品に見られる複雑なプロットやタイムラインの操作は,初期作品で既にその萌芽を見せており,独特な映画作家としての基盤を確立していたのである.
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原題: FOLLOWING
監督: クリストファー・ノーラン
70分/イギリス/1998年
© 1998 Next Wave Films
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