| 肥満に悩む消費者がファーストフードチェーンを訴えた.その報道を見た監督は,肥満との相関を確かめるべく,1ヵ月間その店の商品だけを食べ続けると決意.自ら被験者となり,現代のアメリカ人の食生活を検証する…. |
30日間,1日3食をマクドナルドのメニューだけで過ごす.極端な人体実験は,ゴンゾー・ジャーナリズムの映像的頂点として評価されながら,手法の危うさゆえに今なお議論の対象であり続けている.モーガン・スパーロック(Morgan Spurlock)が自らに課したルールは,馬鹿馬鹿しさとシリアスさが共存するものだった.マクドナルドのメニューにある品目をすべて最低一度は口にすること.1日3食を必ずマクドナルドで摂ること.店員に「スーパーサイズにしますか?」と勧められた際には,いかなる状況でも必ず応じること――3つの戒律が,実験の骨格をなした.
製作費はわずか約6万5,000ドル.撮影の大部分は,当時普及し始めたプロシューマー向けデジタルビデオカメラ,ソニー・PD150によってゲリラ的に行われた.粗削りな映像の質感が,作られた企業広告に対する生々しい個人の記録という対比を際立たせ,結果として世界で2,200万ドル超――製作費の約338倍――を稼ぎ出すことになる.急速に肥満化し,無気力となり,やがて動悸や肝機能の悪化に苦しむスパーロックの身体的崩壊は,利益至上主義に走る巨大企業,それに盲目的に従う消費社会の病理を揶揄する.ガラス瓶の中で何週間経っても腐敗しないフライドポテトという衝撃は,食品添加物への強烈な嫌悪感を大衆に植え付けた.
2004年のサンダンス映画祭でのプレミア上映からわずか6週間後,マクドナルドは全米店舗における「スーパーサイズ」オプションの段階的廃止を発表した.企業側はメニューの簡略化であり,映画とは無関係,と公式に否定したが,ファストフード各社がこの後,サラダや果物,水といった健康志向のメニューを相次いで導入せざるを得なくなったことも,確かな痕跡のひとつである.一方,公開から年月が経つにつれ,科学的厳密性に対して批判の目は厳しくなっていく.スパーロックは実験中に1日約5,000キロカロリーを摂取したと主張したが,根拠となる詳細な食事記録の開示は,繰り返し求められてもついになされなかった.
この不透明さに真正面から異を唱えたのが,トム・ノートン(Tom Naughton)監督作「ファット・ヘッド」(2009)である.ノートン自身もファストフードのみで過ごす実験を行い,摂取カロリーと糖質を論理的に管理すれば体重の増加も健康悪化も生じないことを示し,スパーロックの計算に潜む矛盾を鋭く突いた.厳密な意味での科学的ドキュメンタリーには程遠く,結果をあらかじめ演出した過激なパフォーマンス・アートに近い.しかし,個人の自己責任論に隠れ蓑を見出していた巨大食品産業に対し,飲食産業の社会的倫理責任という概念を強制的に引きずり出した功績は,本物だった.
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原題: SUPER SIZE ME
監督: モーガン・スパーロック
98分/アメリカ/2004年
© 2004 Kathbur Pictures INC.
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