| 世界を揺るがした衝撃の自伝!現代ドイツを代表するノーベル賞作家グラスが,本書でナチスの武装親衛隊員だったことを告白した衝撃の自伝.作家,歴史の証言者としての驚くべきグラスの全貌が,皮をむくように明らかになる――. |
匂い,手触りといった感覚的なトリガーが記憶を呼び起こし,断片が堆積することで全体像が立ち現れる.ギュンター・グラス(Günter Grass)はしばしば若き日の自分を「あの少年」あるいは「彼」と三人称で呼び,老境の語り手と無知で熱狂的だった過去の自己との間に冷徹な距離を置く.一人称で語れば,過去と現在は連続した同一の自己として癒着し,回想はノスタルジーへと堕落する危険を孕む.
三人称の距離化によってのみ,語り手は「少年」を裁く者の位置に,同時に「少年」であった者の位置に,二重に立つことができる.時間軸もまた年代順には進まない.硝煙の匂い,戦後の耐えがたい飢え,アトリエの粘土の冷たい感触――徹底的に物質的,身体的な記憶を記述することで,歴史の教科書には載らない当時の泥臭い空気感を,読者へ直接届けるのだ.
本書が出版と同時に激烈な論争を引き起こしたのは,グラスが17歳のとき武装親衛隊の第10SS装甲師団「フルンツベルク」に配属されていた事実を,60年の沈黙を破って告白したことによる.戦後一貫してドイツの過去の直視とナチス犯罪の清算を説き,国家の道徳的良心として君臨した作家が,自身のナチス加担を長年秘匿し続けていたという事実は,右派からは傲慢な偽善,左派からは致命的な裏切りと受け止められた.しかし,告白という行為を文学的問いへと転換したとき,本書の深みが露れる.
私たちは収容所ごとに徹底的に研究するグループやサークルを組織した.それによって一般教養,芸術鑑賞,哲学的認識,信仰の復活,ならびに実用的な知識を育んでいった.こうしたことすべてが時間割を決めて,徹底的に,また同時にきちんきちんとなされた
『ブリキの太鼓』『犬の年』『ひらめ』に至るまで,グラスが執拗に罪と忘却を主題に据え続けたのは,過去に対する強迫的な代償行為を追求したためである.沈黙があったからこそ,圧倒的な文学群が誕生したパラドックスを認識したとき,グラスの全作品は新たな相貌を帯びて立ち現れる.玉ねぎを剥き続けた先には,何もない.確固たる自己も,贖罪も,真実も存在しない.虚無の前で筆を止めず,記憶の不確実性を方法論として引き受け,語ることの限界を知りながら語り続けることの中に誠実さが宿っている.
++++++++++++++++++++++++++++++
Title: BEIM HÄUTEN DER ZWIEBEL
Author: Günter Grass
ISBN: 4087734595
© 2008 集英社



![ママが泣いた日 [ジョーン・アレン/ケヴィン・コスナー] [字幕] [レンタル落ち] ママが泣いた日 [ジョーン・アレン/ケヴィン・コスナー] [字幕] [レンタル落ち]](https://m.media-amazon.com/images/I/51oxQToV9XL._SL500_.jpg)
![ママが泣いた日 [DVD] ママが泣いた日 [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/21d6cb5Ud0L._SL500_.jpg)
